

「おたまさんのおかいさん」
著者 文・日之出の絵本制作実行委員会 絵・長谷川義史
発行 (株)解放出版社
発行年 2002年12月1日
掲載レシピ
・おたまさんのおかいさん
・おたまさんのおかず(ごっちゃに、きざみ)
この本の主人公、おたまさんの作るおかいさんは魔法のお粥。
朝から孫にたっぷり食べさせても、増えて、自分もお腹いっぱい、
食べさせてもらいに来た知り合いに食べさせた後もまた増えて、
夫婦げんかをする一家にも食べさせてもまた増えて、夕食に一家で食べてようやくおしまい
になります。そしてみんな笑顔になりました。
こう書いてみると、ふんわりした言い本だと思いますが、注意して読み巻末の説明文を
読むとその感想は、甘いしとしか言い様がありません。全然違うとも言えます。
この絵本は、大阪の日之出地区という都市型部落を舞台とし、それに関わる人々が作った
絵本です。
つまりこれは、部落差別を受ける人々の生活を書いた絵本なのです。
その人々の生活はとても大変なものでした。
このおかいさんだって、米を極力水で薄めた物でしょうから味は薄いし、水で腹を
膨らませるような物だったでしょう。
そんなものを口にしながら、彼らは懸命に生きてきました。
今は、同和政策などもあり生活は大部改善してきたようですが、
それでも消えることなく、忘れられることなく、今も考え続けなければならない
問題です。
とはいえ、この絵本は本当に人情たっぷりで、たくましいお玉さんの日常を読んで
欲しいと思います。